「えのき氷」は、砕いたエノキダケを煮詰めて凍らせた食材。商品化したJA中野市(長野県)によると、エノキの成分を効率よく消化・吸収できる。手間をかけて氷にした背景には、いろいろな料理に使って毎日食べてほしいという生産者の思いがある。(寺田理恵) ◆加齢臭しなくなった えのき氷は、みそ汁や煮物、カレーなどに凍ったまま入れて使う。調味料としても利用でき、鍋物に入れるとおいしいという。 エノキ生産量日本一を誇るJA中野市が平成23年に製品化。長野県内を中心に販売し、健康や美容にいいとテレビなどで紹介されブームになった。さらに、今夏は東京農業大との共同研究の報告会を東京都内で開催。えのき氷の継続的な摂取による糖尿病の予防効果を確認したと発表した。健康に良い食材であることをアピールし、首都圏での消費量を増やすのが目的だ。 「えのき氷を3カ月食べ続けたら、娘から『加齢臭がしなくなった』といわれた」。生みの親である代表理事組合長の阿藤(あとう)博文さん(67)は身をもって経験した効果を披露した。 阿藤さんが考案したきっかけは17年、JA中野市が実施した試験で、エノキを毎日食べると血流が改善されるという結果が出たことだ。 キノコが低カロリーで食物繊維やビタミンB群、ビタミンD2、ミネラルを多く含み、健康面から注目されている点に着目。成人100人に1日100グラムを1週間、摂取してもらい、摂取前後の空腹時に採血して血液流動性を測定したところ、エノキを食べた後に約8割の人で血流が速くなったという。 ◆ミキサーが空回り 継続的に食べてもらえれば、鍋物の具としての需要が減る夏場の消費量アップも期待できる。ただ、毎日食べるには1日100グラムのエノキは多い。「何とか食べ続けられるように」。阿藤さんがひらめいたのは、薬草のように煎じて飲む摂取方法だった。 「エノキを細かくして表面積を増やせば、エキスを抽出しやすいはず」。19年秋、ろくに料理経験もなく、包丁を握った。 「まな板の上でエノキを切ったらバラバラ。しようがないからミキサーに入れたら、シャキッとしているので刃に絡まず、空回り。水を入れて回したらドロドロになった」 こうしてペースト状になったエノキを煮て、冷蔵庫で保管したら10日で腐ってしまった。「いっそ凍らせてしまえ」と冷凍庫へ。これが功を奏した。粉砕・加熱・冷凍する過程でエノキの硬い細胞壁が破壊され、栄養成分が溶け出す仕組みを専門家に認められた。 昭和22年、中野市のキノコ農家に生まれ、20歳のときにエアコンを使ってエノキの通年栽培を目指す研究会を仲間と立ち上げた。えのき氷は、年間を通して需要を喚起する切り札だ。「キノコを年中、食べられるようなってまだ40年。毎日、食べる食文化を浸透させたい」と話している。
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